設計事例

東京高次脳機能障害支援ホーム障害者支援施設

HiBDy.Tokyo

2024年12月、練馬区西大泉の閑静な住宅街に東京高次脳機能障害者支援ホームは従来の建物の老朽化のに伴い、建替え工事を経て竣工しました。英語にしたときのアルファベットの頭文字を並べ、通称:ヒブディ・トウキョウ(HiBDy .Tokyo)と読んでいます。
事業内容としては生活習慣病等による脳卒中やクモ膜下出血、事故による頭部外傷、心肺停止による低酸素脳症等を原因とする、高次脳機能障害(中途障害)の支援に特化した入所施設で、それに向き合いながら自立した地域生活を送るための訓練を行う自立訓練事業と、常時に介助・見守りが必要な方への生活介護事業を行っています。
施工データ
建 築 主
社会福祉法人 東京援護協会
所 在 地
東京都練馬区
工 事 種 別
新築
敷 地 面 積
4,341.78㎡
延 床 面 積
4,391.99㎡
構 造 規 模
鉄筋コンクリート造、地上2階
定   員
生活介護30名、自立訓練(機能訓練)20名
竣   工
2024.12
施   工
建築/三浦工務店 電気/大栄電気 機械/協和設備

数少ない高次脳機能障害の入所施設

地域にゆるく開く

自立訓練事業と生活介護事業で各々の訓練室があるものの、隔てなく入所定員50名が暮らしています。1階は多目的室、食堂、大浴室など共用部と管理部門で構成されます。
2・3階は50の個室を4ユニットに分け、EVホールを中心に配置しています。高次脳機能障害の方がわかりやすい様にを意識して設計しており、単純な動線計画やサイン計画で工夫を凝らしています。
訓練・活動棟は日中活動室、理学療法室、作業療法室がならび、普段は可動間仕切りで仕切っているが、開いた時には大広間となります。リハビリ機器を考慮し天井3mとしていること、廊下の腰窓でウォークスルーを意識したことで、日中活動するのに明るい環境を確保することができました。入所棟の住まいの空間から、訓練・活動棟の空間に移動する行為が、家から仕事場に向かう日常生活を模倣でき、入所者の退所後の日常生活リズムをスムーズに移行できる効果も期待しています。

地域にゆるく開く

入所棟は木目やタイル張りにより「住まい」をイメージした色調、訓練・活動棟はモノトーン調でスタイリッシュに仕上げ、「活動」をイメージした色調に分けました。外装を2棟に分けることでスケールダウンの効果を狙い、周囲の住宅街に馴染むよう意識しています。
前面道路からはカーテンウォールを通して、訓練室で活動する利用者の姿を確認することができ、閉ざされた施設にならぬよう考慮しました。躯体でカーテンウォールの枠取りをすることで、利用者の活動を切り抜いたイメージとしています。

散歩するように施設を巡る

交通事故をきっかけに高次脳機能障害を患った方、希死念慮に至るまで心の問題を抱える利用者がいる施設として、障害面の支援とは別に心のケアも必要だと考えました。 アートセラピーや自然のもつ効果を取り入れ、リーフ柄の扉の作成、東屋や壁面パネルは本物の木材を採用、ブルックリン風の木目調が引き立つコーディネートとしています。
また、気持ちの不安から閉じ籠りにならぬよう、共用部には東屋、ベンチ、カウンターコーナーを設け、ひと時を過ごす場所を散りばめた。居室以外の居場所をつくることで気分転換となり、職員や、歳の近い同志との会話がうまれる空間づくりを図りました。
各階の空間づくりをアクセントカラーで意識づけました。
1階:多くの人が行き交う場として調和をもたらす「緑」
2階:訓練・活動練への通り道から気持ちを刺激する「赤」
3階:最上階の穏やかで静かなひと時を過ごせるよう「青」

それぞれ住環境の異なる自立訓練室

3階は自立訓練室が4部屋あり、地域社会に復帰後の住居スタイルに合わせて訓練ができるよう、各々住環境の異なる仕様となっています。
訓練室1:完全バリアフリーの引戸、手摺、昇降式キッチン、車椅子対応のユニットバス
訓練室2:床に若干の段差あり、開き戸、住宅仕様の便所、浴室
訓練室3、4:歩行できる利用者の訓練室、アパートに類似の設備仕様、3点ユニットバス

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